大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和57年(行コ)50号 判決

東京都町田市本町田二九二三番地

控訴人

熊沢重治

右訴訟代理人弁護士

佐藤圭吾

同市旭町一丁目八番二号

被控訴人

八王子税務署長事務承継者

町田税務署長

荒巻健二

右指定代理人

高須要子

屋敷一男

鈴木司郎

吉岡

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  八王子税務署長が昭和五二年三月一一日付けでした控訴人の昭和四六年分贈与税の決定及び無申告加算税賦課決定(但し、審査裁決により一部取消された後のもの)を取消す。

との判決

二  被控訴人

控訴棄却の判決

第二当事者の主張及び証拠関係

原判決事実摘示及び当審証拠目録記載のとおりである。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本件請求は失当として棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加し改めるほか、原判決理由説示と同一であるからこれを引用する。

1  原判決一七枚目表一行目の「証拠(一部)」の次に「、原審における控訴人本人尋問の結果」を、同末行の「開業した。」の次に「尤も、有限会社熊沢石油の実質的経営者は利治であり、控訴人が同社の代表取締役に就任したのは、専ら取引先や銀行の信用等を考慮したためであった。」を、同裏一行目の「経営権を」の次に「名実共に」を、同六行目の末尾に「なお、控訴人が同社の代表取締役を辞任した際、利治は控訴人の出資金を控訴人に全額返済し、また、控訴人が調達して神奈川菱油株式会社に差入れた前記保証金五〇〇万円は、いずれ利治から控訴人に返済する旨の確認が両者間でなされた。」をそれぞれ加える。

2  同一七枚目裏六行目と同七行目の間に次のとおり挿入する。

「5 本件土地につき延夫及び利治名義の相続登記がされた昭和三五年当時、既に、相続による登記申請に必要な相続証明書類として、遺産分割協議書及び当該協議書に捺印した各相続人全員の印鑑証明書等を添付するのが実務上の取扱いとなっていた(昭和三〇年四月二三日民事甲第七四二号民事局長通達)ことは当裁判所に顕著であるところ、前掲甲第二、第三号証、成立に争いがない乙第七八、第七九号証によれば、(1) 本件土地と同じく亡新之助の被相続財産に属する二九一一番及び二九二三番の土地につきなされた相続人を控訴人とする相続登記申請、同じく二六二九番の二の土地につきなされた相続人を熊沢竹子とする相続登記申請にはいずれも遺産分割協議書各一通が添付されていること、(2) 新之助死亡後二、三年位経過したころ、控訴人は、新之助の共同相続人である細谷喜代及び立川アキのもとを訪れ、遺産相続について話し合い、その結果、右両名から遺産分割協議書に押印を受け、右両名の印鑑証明書の交付を受けたこと、以上の事実が認められるから、控訴人は、右両名以外の共同相続人とも同様の話し合いを行って遺産分割の協議を成立させ、同人から遺産分割協議書に押印を受けると共に印鑑証明書の交付を受けたうえ、これらの書類が相続証明書類として添付され、原判決添付別紙一の「相続財産」欄の土地につき同別紙一の相続登記が経由されたことが推認され、同認定に反する原審証人熊沢正雄、同熊沢延夫、同熊沢利治、同熊沢政一の各証言部分、原審及び当審における控訴人本人の供述部分はいずれも措信し難い。」

3  同一七枚目裏七行目に「5 以上1ないし4」とあるのを「6 以上1ないし5」に改め、同九行目の「遺産分割協議書は、」の次に「これに押印した新之助の各相続人によって真正に作成されたものであり、かつ、」を加える。

4  同一八枚目表一行目冒頭から同一九枚目裏八行目までを全部削る。

5  同二〇枚目表二行目の「そして、」の次に「控訴人は、利治が二六二八番及び二九二二番一の土地を控訴人名義にするのと引き換えに、有限会社熊沢石油の代表取締役を辞任しているが、代表取締役の地位は本来財産権の内容をなすものではないから辞任自体は経済的損失を意味しないし、辞任に伴ってなされた前認定の各処置もこれによって控訴人が出捐をなしたと評価しうるものではなく、ほかに」を、同二〇枚目表末行から裏一行目にかけての「ところ、」の次に「控訴人が昭和四六年分贈与税の申告書を提出していないことは後記認定のとおりであって、」をそれぞれ加える。

6  同二四枚目表九行目と同一〇行目の間に次のとおり挿入する。

「なお、前掲乙第四一号証、同第四九号証によれば、本件土地付近の宅地の一平方メートル当たりの固定資産税評価額は四〇〇〇円であり、しかも二六二八番及び二六三一番一の畑地に転用した場合、道路からの距離、形状等の条件を考慮しても、右農地付近の宅地との比較において条件に差がないことが窮われるから、右農地を宅地であるとした場合の単位地積当りの価額を右四〇〇〇円に倍率三・三を乗じた一万三二〇〇円であると評価したのは相当というべきである。」

二  それ故、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石川義夫 裁判官 武藤春光 裁判官 寒竹剛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例